プロデューサーという男

 よく分からん男です。気の利いたことを言うかと思えばとんちんかんで空気読めない。
人の良い好青年かと思えば、突き放した対応を取る無頼コーチ風だったりもする。
彼が『アイドルマスター』という作品の中で、地味ながら重要な個性であることは
恐らく多くのファンの認めるところでしょう。


 アイマスは一般的にギャルゲーに分類される作品であることは確かなのですが
その実、社長以上に姿を現さない、プロデューサーという男性が妙な存在感を発揮している。
アイドルたちと仲良くなるという重要な目的は、間違いなくギャルゲー的な要素だとしても
どうやらそう単純ではない。単純なのかもしれないけれど、それだけではない気がする。


 ある程度アイマスをやり込んだファンは、自分をプロデューサーだと自称しはじめます。
特に格好を付けているわけではなく、それぞれのアイドルたちとの想い出のレコードとして、
毎回リセットされる彼女らとの記憶を蓄積する、一種アーカイブ的な疑似人格として。
面白いことに、そこには同時に、キャストとしてのプロデューサーもまたアーカイブされます。


 キャストとしてのプロデューサー、言い換えるならプロデューサーというキャラクター。
ドラクエの主人公と違って色々ベラベラしゃべくる男ですから、当然といえば当然に思えるにしても
彼がプレーヤー本人ではないという決定的な証拠は、あるいは春香TRUEにあるのかもしれません。
多くの春香ファンを悲嘆と呪詛の海に沈めたあの結末を導いたのは他ならぬこの男。


 そいつは一筋縄ではいかない、ミステリアスな変態です。
裸で泳いだり、胸を揉んで逮捕されたり、15歳相手にプラチナの指輪を贈ってみたり。
かと思えば事務や折衝は軽くこなし、失敗や努力の気配などおくびにも出さないやり手。
アイマスの中で誰が一番謎めいているかと問われれば、僕はプロデューサーを挙げるでしょう。


 春香さんは大好きです。千早も虐めたり撫でたりしたい。ゆきぽのジャージをずり下げたい。
でもそういうのはあの変態、プロデューサーの触媒を通してこそ楽しくイメージ出来るのであって
自分がやりたいのかと自問するとちょっと悩むし、実際どうかと思う。嘘。やりたいけど別の話。
結局、プロデューサーはアイマスの主人公なんじゃないでしょうかね。当たり前だけど。


 そして僕は、わりと彼に萌えてます。