今そこにいる付喪神

鼻毛P 【勝手に修正】初音ミクに「片道きゃっちぼーる」〜フル.僧侶次長Ver

http://www.nicovideo.jp/watch/sm1046381
初音ミクは本来新鋭のDTMソフトであり、単なるツールであることは疑うべくはありません。しかし、彼女に愛らしい姿を与えながら、そのキャラクター背景を表に出すことを控えたクリプトン社の方針は、「愛すべき道具」として彼女をツールと人格の境界に位置付けることに成功しました。版権曲やオリジナル曲を電子音声で歌う人工歌姫としてだけではなく、制作者の心境を代弁する歌い手としてのミクがあるのは、まさにこの位置に彼女が立っていたからこそであり、そんな数知れぬ制作者の想いを映してきたミクが、人々の溢れる想いを紡ぐ仮想人格へと成長したことは、ごく自然な出来事なのかもしれません。もちろん、初音ミク自身の「初期状態では不調法だけれど、愛しただけ応えてくれる」才能抜きにしてこの状況はあり得なかったでしょう。愛されるものを最大限のこだわりで作るからこそ、それは愛すべきものになる。誇るべき日本のものづくりを見たような気がします。大切に使用された道具が歳月を経て人格を持つことは日本古来の伝承ですが、そうしてニコニコ中の愛を集めるミクもまた、既に八百万の国に足を踏み入れているのではないでしょうか。彼女が歌うこと、それそのものが詩や旋律を越えた意味を持ち始めた今、ミクはツールとしても単なるツールを越えた何かに変貌しつつあります。
歌を歌う歌。ネット世界を歩む生きた神話としてのミクは、どこまで笑顔を広げてくれるのでしょう。