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先日積み替えの仕事を手伝った例のスピガローリ氏所有の古城の中庭でクラテッロをかじる夕べ,というお祭りにおよばれした。バッサピアヌーラ,ポー川流域低湿地帯のどまんなかである。蚊の大軍におそわれること請け合いだったので,蚊取り線香を一箱持って行く。最初は[臭いから]云云と使用に否定的だった友人たちも10個大隊のポー川猟騎兵隊の襲撃を受けるや否やあっさり態度を豹変させて大喜び。結局全部辺りにまきちらして蚊を撃退する。


用意されていたのは蜂蜜みたいに甘くて泡の細かいプロセッコと,どこにでもありそうなランブルスコ。前菜には二年弱から三年熟成のクラテッロ(ただの黒豚のハムが一番評判がよかったのは皮肉だ),トルテッリのおひたし(何と言うべきか)が一皿目,ガチョウの腰肉のあぶり焼き(馬鈴薯の揚げたのが添えてある)がメインで,ドルチェはリンゴのジェラート(シルビアにいわせれば[卵が多すぎ])。


inbucarsiという動詞があって,入り込むという意味なのだけれど,ニュアンスを文脈にそわせれば[呼ばれてもいないのに入り込む]で,今晩のコンテクストでは[ただ飯を喰う]ということになる。さて僕の斜向かいにすわっていた自称トリノ人エンリコが正にこのただ飯野郎で,前前から[こいつは絶対ナポリらへんの出身に違いない]とおもっていたのが今夜確信に変わった。


それにしてもワインは素晴らしい。名自4本くらい空けた気がするけれど後腐れがない。麦酒や呑み屋の日本酒ではこうはいかない。大吟醸ではもったいなくてがぶがぶ飲めない。うむうむこうなれば日本で自前で葡萄畠をこさえるしかあるまい等とぶつぶついいながら近隣の卓から瓶を拝借する旅に出た記憶があるが定かではない。僕に限ってそんな無作法なことはしていないと思う。


食べ物もなくなり飲み物もなくなったので皆帰り始める。意大利人どもは全く無作法な連中である。無作法な連中であるが友人であるから付きあわないわけにはいかない。あと,帰りの車もない。故に僕も仕方なく彼等と帰る。さようならジベッロ村。もう積み替えのお手伝いは二度としないと思うけれど,お食事に呼んでいただければ何時でも参上。御馳走さまでした。