酔っぱらって何か書いてたらしい。



グラーヴェ
「名前の意味からは、誰も逃れられない」
grave 重々しく、重大な、深刻な。彼は何をしたか、あるいはしなかったか。


リセルシア
「その言葉、ずっと待ってたんです」
Liselsia(語義不明)。名門貴族の娘。クリスやアーシノと同じく楽器フォルテールの才能を持ち、父親にもその演奏を強く望まれているが、旧校舎に隠れ、一人歌う。その動機はおそらく彼女の歌の詩にあるものと考えられる。


アーシノ
「お前の一番近くにいるのは誰だ、クリス」
asino(ロバ)。まぬけの意を持つ。深読みするのであれば、エルサレム入城の際のキリストの乗り物。クリスの学友で気のいい貴族。唯一と言ってもいいほどの男友達。クリスの過去を知り、現状を知る数少ない人物。ファルシータの気を引くため、クリスの秘密を話すが。


ファルシータ
「私は、幸せになりたいの」
falsita 誤りを意味するイタリア語。ちなみに、幸せはfelicita。才能ある歌手の卵。前生徒会長であり、誰もに好かれる容姿と態度の持ち主。クリスの才能を見抜き、彼に接近を試みる。クライマックスの“独唱”は本作屈指の名シーンとして名高い。


アリエッタ
「なくならないね。だって・・・」
arietta、aria(空気、気配、アリア)の小辞-etta。柔らかなそよ風の意。作品世界を柔らかに包む気配のメタファーか。トルティニタの双子の姉、クリスの恋人。音才はおろか、とりたてて言うことは何もないごく普通の少女であったが。物語の発端の一人。その現象は雨の降る街から読者に問う。「存在」という観念の意味を。


トルティニタ
「ごめんなさい。ほとんど何もかもが、嘘なの」
torta + trinita? 伊語torcere(曲がる、歪む、誤る)の過去分詞tortoの女性語尾変化と、santa trinita(聖三位一体)の複合語?。トルティニタ、彼女により語られるアリエッタ、そして二人に共通する想いの具象、それら三つの姿を象徴する名前ではないかと考える。ヒロイン。才能ある歌手の卵。記憶の混乱したクリスを気遣い、彼の幻想を肯定しながら彼に接するも、次第に誰のために何をしているのかを見失う。


クリス 
「見えないの? 聞こえないの? 雨の音が」
Christ? Christopher? すべての人の罪を背負うと意気込んで十字架にかけられたキリストなのか、あるいはそのキリストの無限の重みを背負って河を渡ろうとした聖クリストファーなのか。主人公。才能ある音楽家の卵。あるショックで記憶が混乱し、あらゆる不都合なことを考えることをやめた。


フォーニ
「思い出して、でも、思い出さないで」
phorniあるいはfoni(声の)。自称歌の妖精。この世のものとは思えない歌声を奏でる。その姿はクリスにしか見えない。その歌声も彼にしか聞こえない。彼がピオーヴァに来た時、彼のアパートに住み着いていた。例外なくすべてのエンディングでその姿は消滅するが、ある結末のみにおいて、その後決定的に異なる展開を見せる。