12月の匂い

夜中に目が覚めてお手洗いに行く最中、カラリと冷えた冬の空気の匂いにふと思い出す。子供の頃、僕はサンタを信じていたわけではなかった。最初から信じていなかったわけではないだろうけれど、ともかくそれは両親のしわざであると、かなり幼いころから明白に認識していた。けれど僕は僕がサンタを信じていないということを両親にばらすのは嫌だったから、いつもサンタを期待するように振る舞ったし、それを疑うような話題は口にしなかった。両親は親切にも、毎年プレゼントを用意してくれた。僕がそれなりに大きくなり、常識的にサンタが消滅する頃まで。

もしかすると僕の虚言癖はこのあたりに由来するのかもしれない。僕にはまったく悪気はなかった。クリスマスにはプレゼントが貰えることは、サンタはいないという事実と同じレベルで(少なくとも僕の中では)決定事項だったから、僕は欲目のためにそう行動したわけではない。ただ僕はひたすら一種の幻想のようなものを守りたかった。それは自分はまだ子供だという仮面だったかもしれないし、あるいは両親への気遣いだったのかもしれない。ともあれ、結果として僕のついていた嘘は最後まで告白されることはなかった。