ひぐらし 音と記憶

目明かし編突入。OPシーンに流れるメロディにため息をつく。ああ――文字が語るのと同じくらい、あるいはそれ以上に音楽は語る時もあるのだ、ということを久々に実感した。完全に畑違いではある。けれど、それが本質的には緻密な理論を抱いた学であることは耳にしているし、何となくわかる。実際、僕らは言葉抜きに、ただ和音だけを通して音楽の始まりを知ることができ、和音だけを通してそれが終わりゆくことを理解できる。不思議ではないか。なぜ僕らはある音の組み合わせを聴くだけで曲という流れの発生を了解し、ある和音の組み合わせを耳にするだけでそれがある意味を込めた側面であることを悟るのか。それ以上、和音の奏でる物語を綿密に知るためには、音楽の作法を学ぶしかないとしても――たしかに音は語るのだ。この物語が終わりの始まりに立っているということを。そして始められたものは、必ず終わらせられなければならないということを。切ない和音と軽やかなリズムに、かすかな、ある予感を漂わせて。