展望

そんなわけで、何となく転機を迎えつつある日本アニメ界の方々には是非ともリーダーシップを取って頂き、キャラクタービジネスのコマーシャル(あるいは萌えキャラのPV)としてばかりではなく、「物語るべきものへのメディア」としてのアニメを突き詰めて貰いたい。同じくおたく文化に属する美少女ゲームというメディアは、その役目を既に果たしましたが、なにぶん余りに対象が狭く、幼すぎた。アニメはそうではない。現代のネット環境は「物語るもの」としてのアニメを世界に発信することを可能にしている。


日本文化は明らかに世界において異質です。南北アメリカはもちろん、東南アジア、オセアニア、果ては中国までもが彼らの庭。しかし、どういうわけか日本だけはその範囲に入ってはいないらしい。それこそが日本を世界中から孤立させている原因ではありますが、私はそれを必ずしも間違ったことだとは思わない。むしろ日本文化(この言い方がマズければ”日本の雰囲気”とでも訂正しましょう)の持つ特殊性は正しいと思う。暇さえあればジムに通い、抱き合ってばかりいなければ落ち着かない社会は、やはりどうかしている。


一人縁側に座って風を眺める時間の素晴らしさ、セミの鳴き声を雑音だと感じない空気、何もかもが有り難い。ひどく前向きな諦観。そういったものを日本は世界に広めるべきだ。ますます心のささくれを増しつつある世界に、日本が今なにか貢献できるとしたら。夏の晴れた日に、誰もいない小さなお社の境内で、麦茶を飲む幸せを知っている人は、神の愛だ、世界の正義だと叫んで人を殺すことの哀しさも知っている。世界一(断言しましょう)人というものを無条件に信頼しているからこそ、相手をことばで説得する手段にとことん疎い日本。アニメはそんな国が編み出すべくして編み出したメディアです。