FATE/hollow ataraxia クリア

Fate/hollow ataraxia 初回版(DVD-ROM)


クリアという言葉が適切なのかどうかよくわからないけれど、凛によればhollow ataraxiaとはシューティングゲームのたぐいらしいので、その文脈上において「一通り終わりました」という状況を「クリア」と端的に宣言することにそれほど問題があるとも思えず、そもそもそれ以外の言葉もあまり思いつかないので、とりあえずクリアと呼んでみましょう。


さて本作において、奈須さんは二つのミスを犯しています。一つは、このお話の主人公を読者であるとしているくせに、クライマックスでは明らかに読者以外の主観が結末を導いてしまうこと。そしてもう一つは、これが致命的なのですが、永遠に続けたい筈の約束の4日間なるものは、永遠に続けたくなるほどには絶対に楽しくなかったこと。


あの結末を有効に働かせるためには、「四日間がむやみに楽しい」ことは絶対条件なのに、実際それは期待したほど心躍るようなものではなく、私にとってこの物語は、「本当に残念だけれど、もう終わらせなくちゃ」ではなく、「もう良いわ、なんか疲れたからそろそろ結末みてエッチシーンでも堪能しよう」という具合に幕を閉じてしまったのでした。


まあそれは当然のことで、私はイリヤスキーですし、はっきり言ってセイバーなど饅頭食わせておけば良く、ライダーなんざ正座の刑、キャス子は寺で修行でもしておればよろしい。桜はお色気担当としてなら出てきても良い。凛は暗黒桜空間状態なら可。他のサーバントはそもそもお呼びじゃないよ、という具合に、嗜好が片寄っているわけです。


ところが本作と来たらサーバントどころかわけのわからん同級生だの寒々しいトラ子だの、あまりにも無駄な要素(読者の一人である私にとって)が多すぎる。なぜならhollowの主人公はすべての読者なので、すべての読者の夢としてのataraxiaは、すべての読者の嗜好をカバーする必要があり、そのことは同時にすべての読者の嗜好を最善の形では提供できない、という現実に直面し、


その結果として、本作は誰にとってもそれほど魅力的ではない作品に仕上がってしまったのではないかと思うのです。


つづくかも