本書には五人の”突きつけられた”人たちが登場する。場面は異なるとしても、それぞれ人生を何らかの絶望に塗りつぶされた人々。全身麻痺の体操教師、末期癌の宗教学者、生き残った特攻士官、アウシュヴィッツ帰りのユダヤ人、そして、ソクラテス。極限は何も肉体的な状況においてのみ起こるわけではない。むしろ精神的な意味での極限こそが人を壊すのではないか。なぜ、どうして。そこには永遠の問いがある。生きようとする理由があれば、人は生きられると誰かが言った。では、理由がなくなったとき、私たちはどうすれば?
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