シンフォニック=レイン

シンフォニック=レイン DVD通常版

特に萌え系の女の子がたくさん出てくるわけでもドラマティックな出来事が続くわけでもないので、エンターテインメントとしてはかなり厳しいですね。キャラ的にはフォーニがちょっとかわいいくらいだもん。ヒットするわけないよ、このゲーム。

日刊海燕さん4/18付け記事(id:kaien:20050418:p3)へのレスの続き。トリック他があっさりしすぎている、というのは、クリスがあんまりにも全てに関して執着しなさすぎると言う事と同じ側面を持つと思います。つまるところ、彼にとって(そしてあの作品にとって)こだわるべきはただ一つの真実の隠蔽のみであって、その他の全てはどうだって良いのでしょう。言い換えれば彼の行動は全て、「彼自身の持つ嘘」を塗り固めるために半ば無意識に演出されるものであり、それ故に、彼はトルタが呆れるほど、全てに(おそらく生きていると言うことにさえ)対して無執着を装わされる。

リセと同じ部屋に寝泊まりしても襲わず、ファルにあの仕打ちを受けても許し、何よりあの事件自体を忘れてしまうという彼の「恐るべきいい加減さ」。それは裏返せば、彼の徹底的な自己欺瞞(そして読者への煙幕)に他なりません。だから、一見、彼の行動は人間として、物語の登場人物として、どうにも筋が通らない。トルタの気持ちが、そして主要キャラクターたちの気持ちが、痛いほど理解できるのにもかかわらず、読者にとって、クリスという人物は、主人公なのに、最期までわからない。その真実の気持ちは(しつこいくらい)意図して伏せられている。

そして必死で探り当てた彼の真実とは、以上の疑問を説明はしてくれるものの、けっして快いものではない。それどころかむしろ最悪で、伏せられたままの方が、まだ本作はエンターテイメントに近かった。だって”お約束”が、最初から”お約束”そのものだったなんて。クリスという主人公は、主人公なのにもかかわらず、最初から、それを理解し、むしろ展開していたなんて。その恐るべきお約束の欺瞞は、ある意味であまりにも背信的で、もう何だかひたすら悲しくなってしまう。そんな結末の後には、あの作品の登場人物すべてが、何だか無性に可哀想です。(最期まで寂しい)SRのタイトル画面が、まさに印象づけている気持ちなのですが。