運命、世界にこんな物語があるという奇跡

シンフォニック=レイン DVD通常版 
運命という日本語に対応する英語として、DESTINYとFATEという二つの言葉があげられるでしょう。FATEという言葉は、破滅としての運命を意味します。空しく悲しい結末としての運命。これでお終い。それがFATE。そしてDESTINYとは、それら幾つものFATEの先に、いつか辿り着くことができるであろう場所、「なるようになる」運命を意味します。言い換えれば宿命とでもなるのでしょうか、それは、けして甘いものではありません。それどころか、努力しても努力しても、最後まで報われないかもしれない。でも、いつかきっと「なるようになる」はず。そう信じて、待ち続ける。それがDESTINYという言葉が持つ、祈り。

2004年は、「運命」について語る、いくつかの作品が現れた年でした。その一つは「悲しい結末」のまま幕を閉じ、また一つは「奇跡」へと救いを求めました。それらの中で、『シンフォニック=レイン』は、唯一、見事DESTINYを描ききった作品ではないでしょうか。時は戻らない。奇跡は起こらない。世界は常に、雨の中。でも、いつか、いつかその中に降りそそぐ、光があると思う――。そんな祈りを感じ、「この世界」の中で、「もういない彼女」の歌声がリフレインするたび、私は涙が止まらなくなります。「彼女の死」すら、運命だったのかもしれない。そう思わなければ悲しくて仕方のない、このあまりにも緻密な、けれど意味を失った世界の片隅で。


愛はさだめ さだめは死