近況

家計が逼迫し、生命活動に危険が生じたとき、福祉国家の構成員は行政に援助を求めることができる。と言うことにはなっているのだが、無駄遣いのしすぎで給料日まで食い扶持がなくなったような間抜けな状況で一々市役所に駆け込む人はあまりいない。いや大阪あたりには相当いるかもしれないけれど、ああ、ほんとにもうまた大阪か。さて実際問題として食料の備蓄も底を突き、財布の中には銅合金とアルミ片とビデオ屋の割引券しかなくなった時、私たちはどうすればよいか。つまり数日間にわたり最もエネルギーを使わない生活をするにはどうすれば、という問題である。こう書けば誰でもわかる通り、毎日ぐうぐう寝ていればよろしい。部屋で寝ている分には腹も減らず、うっかり買い食いもせず、当然電気ドリルなんかを衝動買いして食費に困るということもない。優れて経済合理的であり地球に優しい行動と言える。なおこの省エネを見事に実践している人のことを一般にひきこもりと呼ぶが、彼の経済状況が悪いのは不況のせい、つまり政府の政策ミスだし、彼が家から出てこないのはけして怠惰な故ではなく地球環境を憂慮してのことなのだ。そう、引き籠もりとは無意識のエコロジーを反映した新生活スタイル、流行り言葉で言うところのスローライフなのである。そんな引き籠もりを見下す世情に私は断固抗議したい。彼らは偉い。何でったってひたすら退屈だ。死ぬほど退屈だった。思い出すのも嫌。