私的ナイフ感

3000円程度。

アウトドアマンはやたらとナイフが好きだ。アウトドアショップの図書コーナーに行けば必ずナイフ関連の書籍が数冊以上発見出来るし、カウンターの近くにはナイフが入ったガラスケースが置いてある。キャンプサイトで出会った人々は、しばしば自分のナイフの自慢をする。どうやらアウトドアとナイフは切り離せないものらしい。
ところが実際、キャンプでナイフが活躍する状況というのはそれほど多くない。せいぜい肉を切ったり、ジャガイモの皮を剥いたり、缶詰をこじ開けたりする程度なのである。ほとんど包丁で用が足りるし、ジャガイモならピーラーが、缶詰ならば缶切りがある。
ナイフなら一本で全てこなせるじゃないか、という意見はわかる。しかし、アウトドアマンが持ち歩いているナイフというのはたいてい妙に小さい。あれでは包丁替わりに使うのにいかにも不便だ。ジャガイモの皮を剥くのなら小さい方が良いだろうが、私たちはドイツ人ではないから毎日芋とソーセージとビールだけと言うわけにも行くまい。
また、それらナイフのほとんどは折りたたみ式だ。折りたたみ式は収納がコンパクトで良いのだが、使用するたびに刃を柄の中から引っ張り出さなければならず、おまけに使用後、特に調理の後は、刃を良く洗って乾かさないといけない。手間ばかりかかる。鞘付きのナイフ(シースナイフ*1)であれば、抜くのもしまうのも一動作で済むのに。
結局のところ、上記の通り、アウトドアでナイフが最も活躍するのは調理時である。木の枝を切ったり鉛筆を削ったりといったロマンチックな行動は、実際のところあまりしない。キャンプ生活というものは(時間的にも精神的にも)それほどゆとりたっぷりなシチュエーションではないから、用具はなるべく使用頻度が高い目的に特化すべきだと思う。
小さなナイフはコンパクトだし、軽いし、デザインも美しいものが多い。確かに魅力的だ。しかしながら当然値段も高い。勿体なくて缶切りなんかに使えない。刃こぼれしたら悲しくなる。刃が小さすぎて食材も切りにくい。調理に時間がかかる。結局あまり使わなくなって、ポーチの隅に鎮座してしまう。
初めてナイフを選ぶ際は、果物ナイフ程度の刃渡りを持っているシースナイフを選ぶべきだと思う。小さなナイフは軽量小型だが、結局それだけである。小さなナイフで出来ることは、だいたいのところ大きなナイフでもできるし、だいたいの場合大きなナイフの方が便利だ。それと、あまり高いナイフは必要ない。少々安くたって切れるし、どうせ缶詰に突き刺したら刃こぼれする。

*1:鞘のことを英語でsheathと言う。鞘ナイフ。変な呼び名だ。