パッション

パッションを見た友人が興奮しながら帰ってきた。話を聞くとユダの裏切りからキリストが十字架にかけられるまでを克明に描いた物語らしい。聖書でも指折りのドラマチックなシーン、さぞかし素晴らしいものに仕上がったのだろう。神の御心を我々は知らず、信仰は常に堕落するものであり、人は一番愛した人をすら裏切る。かように存在自体が罪の根源である人間の、すべての罪の肩代わりに磔刑に処せられたキリスト。その彼でさえも、自らの神への信仰について揺れた最後の一昼夜。神の国を知っていながら、罪深い地の国を生きなければならない人間達の群像劇、それはつまり、人類に課せられた宿命の物語でもあるのだ。