『R.U.R.U.R』に思う(中)
注:この記事は遠い未来の宇宙をただ一隻で航行する壊れた宇宙船「サン=テグジュペリ号」を舞台に、最後の人間イチヒコと彼を取り巻く被造知性たちによる、ハートウォーミングな死出の旅を描く成人対象ノベルゲーム『R.U.R.U.R』に関する記事です。内容には若干のネタバレが含まれます。より詳しい情報が必要な方は公式サイトあるいは『R.U.R.U.R』ヒロイン紹介を参照してください。
はじcはamazonで『R.U.R.U.R』のサントラを買ったということ
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「音楽が良い」はもうずっとまえから陳腐な褒め言葉に成り果てていて、今さら読者に何の好印象も与えないことは明らかなのですが、それでもル・ル・ル・ルの音楽が高品質なことは動かし難い事実で、具体的にははじcが2500円を払ってサントラを買ってしまうくらいの魅力がそこにあったのも事実でした。それも考えてみれば当然のことで、というのもこの作品は、そのタイトルからして歌声だからです。
ただし、ちゃんとラブソングを知っているのはヒナギクだけで、他の二人が嬉しそうに歌うのはコンビーフのコマーシャルソングです。実は『R.U.R.U.R』は糖衣がけのリコリス錠のようなお話で、ぺろぺろ舐めるぶんには大丈夫だけれど、短気を起こして噛み潰したりすると、それは大変なことになるのです。読者が必ず抱く違和感は、その甘さの裏に、苦い、苦い味を感じるからでしょう。
例えば、『R.U.R.U.R 〜このこのために、せめてきれいな星空を〜』というタイトルは、三つの要素を持つと考えることもできます。つまり、歌声である「ル・ル・ル・ル」、副題である「このこのために、せめてきれいな星空を」、そして、それが導く実際のお仕事。それぞれヒナギク、ミズバショウ、シロツメグサの役割です。だとすると、タイトルからして、シロ姉の扱いはかわいそうです(´;ω;`)
ここに指摘されている通り、ミズバショウはお母さんというよりもお姉さん。お母さんに近いのは、どっちかと言えばシロツメグサの方で、しかもただのお母さんというよりは、とてもとても恐ろしい大地母神の類です。なので、「原罪」や「創造者」といったことを声高に叫ぶ他のロ○ットたちと違い、黙って”街”の手入れをするシロツメグサは、はっきり異教的で、必然的に、気の毒なくらいに疎外を受けるのでした。
主人公の誕生日を祝うために、こころをこめてお空を磨き、野原いっぱいに花を咲かせ、やさしく星を光らせたのは、シロツメグサです。なのに、それら全部が、主人公とヒナギクの「じてんしゃふたりのり」のための舞台装置に他ならず、シロツメグサ自身のシナリオにおいてさえ、「俺たちの戦いはこれからだ」風の結末しかないのは、本当にどういうことなの。゚(゚´Д`゚)゚。
R.U.R.U.R ル・ル・ル・ル このこのために、せめてきれいな星空を 初回版
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注:シロツメグサ、正式名称R-シロツメグサD D-ISSG-0100118Dは、スパイスとお砂糖と人造蛋白質でできているR-ヒナギク ISF-ISSAC-0010102FやR-ミズバショウ ISSAC-1011105Lと違って、ドレクスラーと呼ばれるナノマシン群体で構成されている被造知性です。主人公のことが大好きで、彼と仲良くなるために彼のお姉さんになりましたし、彼のためにいつも街も空もぴかぴかに保っています。なのに、主人公は、歳を取るだけが取り柄で、宇宙でも行かず後家になるミズバショウや、あろうことか家族でもない、しかもヘラブナを捕まえるために釣り堀でデラメーターをぶっ放すような、力自慢の軍用機ヒナギクとばっかり仲良くするので、たいがい頭に来ちゃうのでした。そこで彼女は、マンカインドの生態を克明に描いた古代の文献「漫画」や「エロゲ」を参考に、マンカインドのおとこのこがきっと気に入るに違いないサービスを、いろいろと実行することに決めました。司法HALが何を言おうが知りません。だって、シロツメグサは、船で一番物知りですし、なによりも、船で一番主人公に良くしてるのですから。