アイマス哀歌
- 出版社/メーカー: ナムコ
- 発売日: 2007/11/01
- メディア: Video Game
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実際、ヒロインと一切会話をせずとも、ファン人数と必要オーディションを押さえるだけで正エンドにはたどり着けます。逆にいくらヒロインとキャッキャウフフして好感度を上げても、人数規定をクリアしなければダメ。本質的にADVゲームではないんですね。
第一にファン人数を確保。余った時間で会話ボーナスを楽しむ。ドライで単純なルールを持ったゲームです。その意味では、あるいは脱衣麻雀等の系譜に連なる作品なのかもしれません。
与えられる時間は51週間、とりあえずの目的はAランクでのラストコンサート成功。 約30週分はファン確保のためのオーディション及びレッスンで消費。 残りの20週前後がADVシーンに割り振り可能な時間。
具体的に見てみましょう。51週が各プロデュースに与えられる期限です。この51週をそれぞれ会話(通称コミュ)・レッスン・オーディションに自由に割り振る。やりたければ延々レッスンしていてもいいし、延々会話をしていても良い。
ただし、ファン人数によってコミュは異なるため、多彩な会話パターンを見るためにオーディション参加は避けられません。また、ヒロインとの正エンディングを迎えるためには最低100万人のファンを集める必要があります。
1回のオーディションで獲得できるファン数は約5万人。規定を達成するため最低20週をオーディション出場に割かねばならない計算です。加えてステータス上昇のために約10週程度がレッスンに割り当てられる。
残る20週前後がヒロインとの会話への可処分時間。
下位ランクの会話は楽しいし、別にAランクを目指すことは強制ではないが・・・ 結末を知っている限り、どこかうら寂しさが付きまとう。
このように、遊ぶ前からどれくらいコミュができるかが予想できます。むしろ、「どれくらいしかコミュできないか」がわかる。もちろん、正エンドを目標としなければ結構色々やれるんですけど・・・アイマスファンにしばしば共通する「初回プレイのトラウマ」という名の強迫観念が、なかなかそれを許してくれない。
なんというべきか、生き急がされるゲームです。クリア直前にふと振り返ってみると、あれもやり残した、これもやり残したという気になる。千早がぽろりとこぼす「必要に飲み込まれる」って台詞がぴったりかもしれない。ギャルゲーとしてこのゲームを見た場合、本当に難しいのは、満足のいくストーリーの糸を紡ぐことでしょう。
アイマスMADの隆盛のうちには、この辺りへの鬱憤が吹き出していた部分もあるのかな、などと思ったりします。なまじADVシーンが素晴らしいだけに、それらを横断的に味わえない歯がゆさへの代償行為と言うべきか。
ゲーム『アイドルマスター』内部では、ヒロイン同士の掛け合いはほぼ皆無です。あくまで主人公とヒロインの一対一の関係が基本。たとえデュオやトリオを組もうとも、会話を交わすのは一人だけ。
一方ニコマスでは、ヒロイン同士の関係というものがごく当たり前のように描かれ、また共有されます。もちろんラジオや各種メディアミックス作品の描くところでもあるのですが、それが広く受け容れられていることは興味深い事実。
どんなに頑張っても、シーン全てを同一プレイ中に見ることは出来ない。 また、それに近づけようとすればするほど、結末は惨めなものになる。
『アイドルマスター』ってゲームには、意図してのものかどうか、妙に現実的なところがあります。好むと好まざるに関わらず「やるべきこと」がはっきりとしていて、その結果「やりたいこと」は取捨選択していかざるを得ない。
それを果たさなかった、あるいは果たせなかった場合、待ち受けている結末は存外冷酷で、予想以上に悔いが残る。そして、やりたかったことをどれほど成功させても、この結末を変えることは出来ません。
上で引用したMADの主人公、如月千早のストーリーで描かれるものは、この辺りを実に上手く表現しています。それのもたらすものが完全でないにしても、とにかく上を目指すしかない。なぜならそれは最初から、どこかほろ苦いお話だからです。
気がつけば六本木ヒルズを彷彿とさせるような高層建築に移っているプロダクションオフィス。時折、雑居ビルの日々が懐かしくなります。Bランクの遠さにめまいを覚えていた頃。やよいと実のない営業まわりをしたり、千早の扱い方がさっぱり分からなかったり。
今では千早の涙の拭き方も覚えましたし、春香もあまり転けません。もうやよいがうどんを持ってくることもないでしょうが・・・「うっうー、毎日営業しても、全然人気がでませーん」と困った笑顔でジャンプしていた彼女の姿は、今プロデュースするどのヒロインよりも、ビビッドに思い出されます。
不思議なことに。