ニコニコ街、アイマスストリート

先日、コメント欄で「アイドルマスター新作が出ること自体は好ましいが、アイマスMADジャンル自体にとっては本当に良いことなのだろうか」という意見を貰いました。*1 MAD制作者たちが手間暇かけて切り貼りしていたダンスシーン合成作業が簡略化される結果、(1)これまで以上にMAD編集センスや技量というものが前面に押し出され、素人にはとても手が出せないレベルの世界になってしまう (2)逆に誰でも編集作業が出来るようになり、本当に手間暇かけて制作された高度な作品が埋もれてしまう といった可能性についての指摘だと理解しました。その上で、何となく思ったことを、日記風に。


僕がアイマスMADに足を踏み入れた時、「一万作品以上あるんだ」という話を聞いて、さぞかし猫杓子な作品が多いのだろうなんて思ったものです。中に「有名どころ」がある以上、「無名どころ」もあって、それらは当然クオリティが低い、なんて。ところが、よくよく廻りを見てみると、そうでもない。むしろ、ぐるっと見てみたら、だいたいどれも結構好きだったりする。だから、僕は勘違いしていたのです。アイマスMADを、スーパーの工業商品か何かと。


アイマスMADの世界って、やる気のある個人商店なんですよね。服飾関係でイメージしたらわかりやすいかも知れない。一部超有名ブランド店があるわけですよ、しーなPとかわかむらPとか。他にも奇抜なデザインを売りにしてるブランド、可愛らしいデザインのブランド、やたらお手軽価格の新作を連発するブランド・・・。でも、そんな有名じゃないお店もいっぱいある。そして、それらだって別にクオリティが低いわけじゃない。

何かと言えば結局、好みと優先順位の問題で、聞いたことのない作者が、素晴らしい一品物を売っていたりする。もちろん、大多数の好みを惹きやすい作風とか、目に見えてずば抜けたセンスやテクニックを駆使しているとか、そういうところもあるけれど、だからと言って世界中の人がエルメスを着たがるかと言えばそういうものでもなく。

お店ごとに個性があって、同じ物は他では手に入らない。それぞれの作品が、それぞれ作られた文脈みたいなものを持っていて、それにピーンと来たらその作品はその人にとって有用だし、さもなければそうではない。そんな感じじゃないかと思います。同じ服でも似合う人似合わない人がいるというか。うん、本当に服飾のイメージだなあ。


ショーウィンドウを眺めて、入ろかな、入らんとこかな、って迷うような、そんな感じの個人商店の並ぶ、散歩して楽しい街角。アクセサリからコートまで、値段は必ずしも安くないけれど、その価値は十分にあって、長い間大切に使えるような品を売ってる。愛着っていうのかな。そういうものを引き出さずにはいない商品とその作り手たち。その界隈を歩いてるだけで楽しい。

うん、アイマスMADの強みって、やっぱりどれもこれも、愛がこもってることでしょう。その愛の方向性に気がつきやすい作品はより多くの評価を受けるけれど、気づかれにくい作品だって好きな人は好きになる。だから、初見でどうってことなかった作品が急に輝いて見えたり、あんなに衝撃的だったあの作品が、気がつけばそこそこだったり。


乱暴な結論だけれど、アイマスMADのモチベーションが愛である限り、粗製濫造ってことにはならないと思います。だってしたって意味がないから。そして、高度な手法が当たり前になれば、意欲ある個人商店もやっぱり努力して、それについて行くと思うのです。根拠はないけど。だって、みんな愛のためですもの。

*1:新作『Live For You』に関しては未だ殆どが謎の状況ですが、大方の噂を集めると「ダンスシーンのエディットがより多彩かつ自由に行えるようになる」ようなモノの気配。つまり、MAD用の動画切り出しが容易になり、またダンスパターンが豊富に提供されるわけで、単純に考えればアイマスMADにとってこの上ないグッドニュースに聞こえるのですが、