GUNSLINGER GIRL 5

GUNSLINGER GIRL 5 (電撃コミックス)
ガンスリンガー・ガール第五巻。光溢れるローマ近郊でのフランコ&フランカ+ピノッキオの家族の休暇、一方フィレンツェ、仄暗いサン・マルコ美術館(フラ・アンジェリコ『受胎告知』前!)にて行われるクリスティアーノ・”サヴォナローラ*1捕捉命令。走り続ける意味を見失い始めた”テロリスト”たちの悩みと、躊躇なく彼らに襲いかかる福祉公社。避けられぬ宿命の激戦、トリエラv.s.ピノッキオが残したものは、悲しい涙と癒えない傷。イタリアの激しいコントラスト、明と暗、動と静、善と悪の狭間に、物語はいよいよその本当の姿を現し始める。”テロリスト”とは、実際のところ、誰なのか?

■ピックアップ
サヴォナローラ火刑の絵を背景に「やり方を間違えたらしい」と独白するクリスティアーノ。それは同時に、カテリーナ=フランカの本心の言葉でもあったろう。お前は何のために戦うのか、それで何を得るのか。それは「人をどうこうしてまでやる価値のあることなのか」と問うニノの言葉。彼女が求めていたものとは違う方向へ、自らを突き動かす空虚の存在。だがそれを噛みしめる間もなく、フランカは。

■152頁、そして
ここへ来て、”主人公側”たる社会福祉公社の致命的違和感、その根本的なおぞましさが白日の下となる。もはやなぶり殺し状態のクリスティアーノ一派に襲いかかる義体の面々。あどけない顔で執事を車に叩きつけるリコ、十字架を握りしめるフランカに機銃の雨を降らせるアンジェ。そして、ピノッキオに対する勝利=彼の殺害を、泣きながら宣言するトリエラ…。*2

そう、明らかに、明らかに何かが間違っている!

*1:名前の持つ意味が強く暗示された巻である。サヴォナローラとは社会改革に失敗して失脚し、火刑に処されたフィレンツェの著名な聖職者(皮肉なことに、かつて彼の住んでいた修道院こそ、現在のサン・マルコ美術館)であり、カテリナとはローマ皇帝に討論を挑むも聞き入れられず処刑された、カトリック世界に高い人気を持つ、アレクサンドリア生まれの美しい女性聖人の名である(なお、彼女の肖像にはしばしば”車輪”が描かれる)

*2:逃亡を試みるピノッキオに追いすがり、まさに”化け物”じみた暴力的性能で彼をなぎ倒すトリエラ。もはや言葉もなく、ただ涙を流しながら戦う二人の姿から、この私闘の空しさがひしひしと伝わる。なぜならそこには、もはや何の意味もないのだ。死闘の果て、ついに”ピノッキオ”は倒れ、”おじいさん”たるクリスティアーノも生死不明となったが…童話『ピノッキオ』の結末は、もう少し先だと信じたい