シンフォニック=レイン

シンフォニック=レイン DVD初回限定版
聖土曜日。聖なる三日の最後の日。復活徹夜祭。


シンフォニック=レイン』はまさに総合芸術である。しかも、演じ手、歌い手共に知覚しうる限り失敗のない状態で世に送り出すことができる上に、映像としてのすべての配役を想いの通りに創造し、加えてすべての舞台装置を間違うことなく稼働させながら公開できる点で、他のどんな現実のそれにも勝る完成度と安定性を持つ。しかし、『シンフォニック=レイン』は、それが持つ恐るべき符合性は、暗示性は、あるいは「響き」は、そんなありきたりな説明で言い切れるものではない――少なくとも私にとっては。それは発売日からして、計算されていたのだろうか。あるいはそうかもしれない。では、岡崎律子の死、それも、計算されていたのだろうか。そんなわけはない。何より、私が今年”1月21日”にこの作品を読み始めることを、誰が計算していたと言うのだろう? あり得ない。私にとって、この作品はspecialeだ。それは奇跡的な古典的構造を持ちながら、限りなくロマンティックであり、しかも残酷なほどロマンティシズムではない。視点を移すたび、必ず何か新しい属音が浮かび上がり、それでもいつしか、確かに読者をそれぞれの主音へと導く。千の言葉を、万の歌をもってしても語り尽くせない、その調性の不思議な輝き…ああ、言葉を紡げば紡ぐほど真実の想いから遠ざかるこの空しさ。

今日。それは私たちが彼女に出会い、そして、別れた日。