シンフォニック=レイン

得られなかった、未来

ほぼ一週間に渡り、私の心を騒がせ続けたS=R。一言で言って、脱帽です。テーマが個人的にストライクだったのは差し引いても、あの緻密なライティングは実際、ただ者ではない。シナリオ担当の西川氏というのはよっぽど性格が悪いに違いなく、あんな(お話を思いつける)人物がいる、この世界の恐ろしさをつくづく痛感。そしてそんな物語と、岡崎律子の音楽のシンフォニーが、なによりも素晴らしい。あれほどストーリーに調和した楽曲制作、それも片側通行ではなく、物語と楽曲を相互に照らし合わせて初めて互いの、その止揚された意味がわかるだなんて、まさに鳥肌ものである。もはやムーサイに愛されていたとしか思えない。ついでに言うと彼女は発売の一月後、通常版発売の三ヶ月前、04年5月5日に亡くなっていて、(たとえ「ファンの悪い癖」だとかなんとか言われても)致命的に運命的な何かを感じてしまう。…だって、”あの歌詞”、ねえ?
それでもあえて言うならば、まあ、本作、シンフォニック=レインの最大の弱点は、緻密すぎて妄想が入り込む余地がないことでしょう。ささやかな萌えに対してすら、鉄壁のバリアを積載しています。アンケートでも人気が無いわけで。